こんにちは、調理師のおかだけんいちです。
いきなりですが、みなさんは夕飯の献立を決めるとき、どうやって考えていますか。「今日は何を作ろう」とレシピから考えて、必要な野菜を買いに行く——多くの方が、この順番だと思います。
先日、私はその順番が逆になる体験をしました。旬の野菜が、こちらで中身を選べないまま届く「野菜の定期宅配」を試してみたんです。届いた箱を開けて、そこにある野菜から「さて、今日は何を作ろうか」と考える。この順番の逆転が、思いのほか面白かった。今日はその話を書きます。
スーパーの野菜と、何が違うのか
まず正直にお伝えすると、こうした宅配の野菜は、スーパーの特売品と比べれば安くはありません。ただ、調理師として25年やってきて言えるのは、「安い野菜」と「質の良い野菜」は、まったく別物だということです。
届いたトマトは、ヘタの際まで真っ赤に色づいていました。青みが残っていない、完熟の状態。そのまま塩も振らずに食べてみると、酸味が少なく、角のない甘み。良い野菜は、手を加えないほどに差が出ます。加熱で味を足すより、塩ひとつまみで完成してしまう。まさに、そういうトマトでした。
“見たことのない野菜”は、献立力を育てる

この宅配のいちばんの特徴は、その時期の旬が、こちらで選べないまま届くこと。裏を返せば「見たことのない野菜が届いて、どう料理していいか分からない」という戸惑いにもなります。
でも、私はここにこそ価値があると思っています。
たとえば、今回は生きくらげが届きました。乾燥きくらげは知っていても、生を買ったことがある人は少ないはずです。私はさっと湯通しして、卵とアスパラと中華炒めにしました。乾燥を戻したものとは違う、生ならではの肉厚でプリプリの食感。これは、届かなければ一生作らなかった一皿かもしれません。
「何が届くか分からない」というのは、裏を返せば「毎回、新しい食材と向き合う」ということ。 決まった野菜を決まったレシピで使うだけでは、料理の引き出しは増えません。手元にある食材から献立を組み立てる——この力こそ、食育でいう「生きる力」の土台だと、私は考えています。お子さんと一緒に「これ何だろうね」と調べながら料理するのも、立派な食育です。
食べることは、その先とつながっている

もう一つ、私がこうした宅配に惹かれた理由があります。多くのサービスが、化学合成農薬・化学肥料に頼らない栽培や、新規就農者の支援、環境に配慮した農業を理念に掲げていること。
ただ野菜を食べるという行為が、その野菜を育てた人や、畑の環境、これからの農業とつながっている。そう思うと、一枚のお皿の見え方が少し変わります。子どもたちに「この野菜は、どんな人がどんなふうに育てたんだろうね」と話すきっかけにもなります。
まとめ
野菜の定期宅配は、料理が好きな人、素材の味を活かしたい人、そして「食」の背景に関心がある人にとっては、とても面白い選択肢です。もちろん、決まった野菜を安く手早く、という方には向きません。合う・合わないは、はっきり分かれます。
私が実際に取り寄せて、届いた野菜を一つひとつ調理師の目で検証した詳しい記録は、こちらの記事にまとめています。味・鮮度・使い勝手を正直にレビューしているので、興味のある方は覗いてみてください。


